相続人に不在者がいる場合の対応として「不在者の財産の管理」と「失踪の宣告」の二つの方法があります。
失踪宣告は不在者の生死が7年間不明のときに、家庭裁判所に請求することにより死亡したとみなす制度です。
認められれば残った相続人で分割協議をします。
もう一方は、家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を請求する方法です。
選任された管理人が分割協議に参加して遺産を分割し、その内容に基づいて行方不明者の代わりに申告をします。
財産管理人を選任しない場合は、相続財産は未分割なので、行方不明者以外の各相続人は民法の法定相続分により相続税を申告することになります。
また、相続税の申告期限は相続の開始を知った日から10ヵ月以内ですが、行方不明者が被相続人の死亡の事実を知らないとすると、その人には申告期限が来ないことになります。
この場合、税務署長は相続税の申告書の提出期限前でも10ヵ月を経過したら相続税額を決定できることになっています。
相続人が行方不明だと遺産分割がスムーズに進まず、不動産の登記や預貯金の解約に多大な労力を要します。
遺産分割を前提としている「相続税の配偶者の税額軽減」などの優遇措置も受けられないため、行方不明者がいる場合は、生前に遺言書を作成しておくことが大切です。
熊本日日新聞「税のはなし」より
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